[08/01(水)更新]
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龍の章【獄幻魔の娘Ⅰ】

無事に次元の狭間から居城へと戻ってきたズオーとロミア。 
そんな二人を笑顔で出迎えたのは、ズオーの配下であるスカーレットだった。 
「お帰りなさいませズオー様、姫様。本当にお二方ともどれだけ心配したと思っていらっしゃるのですか。特に姫様?」 
「ひゃっ!? ご、ごめんなさいスカーレット姉様」 
ロミアへ愛情のこもったお説教をひとしきり終えたスカーレットは、再び玉座へ着くズオーを見て首を傾げた。 
「……姫様、次元の狭間で何かあったのですか? ズオー様の雰囲気が少し変わったような気がします」 
「お父様はもう一度、龍契士のかたと戦いたいのだそうです」 
「ズオー様が、破壊以外の目的をお持ちに……」 
スカーレットは目を丸くして主を見つめる。 
常に本能に従って行動してきた獄幻魔がこのような目的を得たのは、彼女が知る限り初めての事だ。 
「私もお父様の願いが叶うようにお手伝いします! スカーレット姉様も、力を貸してくださいますか?」 
「承知いたしました。わたくしもズオー様や姫様のお力となりましょう。不在のアーミルも呼び戻さなくてはいけませんね」 
「ありがとうございます、姉様!」 
嬉しそうに顔を綻ばせる彼女の頭を撫でようとした時。 
「ロミア!」 
ズオーの叫びと同時に、彼女の背後に人影が現れた。 

『鍵の生き残りが、獄幻魔の娘になっていたとはな』 

広間に姿を見せたのはディステルだった。 
「姫様!」 
突如として現れた侵入者を前に、スカーレットはロミアを引き寄せようとする。 
しかしその手が届く前に、ディステルの龍が彼女を吹き飛ばした。 
壁に叩きつけられたスカーレットに悲鳴を上げ、走り寄ろうとするロミア。 
しかし彼女の行動をドロリとした龍が遮る。 
ディステルが自身にとってよくない存在だと直感したロミアは、警戒の色を滲ませる。 
「貴方は……誰、ですか」 
「道具に名乗る必要はない」 
ディステルは冷ややかにそう言うと、彼女へとゆっくり手を伸ばす。 
この手に捕まってはいけない、けれど体が動かない。 
「その娘に触れるな」 
そんなロミアを恐怖から解放したのは、力強い父の手だった。 

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