[12/06(木)更新]
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龍の章【幕間】

『全ての龍覚印が天城に届けられた』
天城の一室にいたディステルは、その知らせを持ってきたダンタリオンに眉一つ動かさず『そうか』とだけ言葉を漏らした。
そんな彼に、ダンタリオンはケラケラと笑みを深める。
「順調に事が進んでいるではないですか。もっと喜ばれてもよいのではありませんか」
「経過を称賛して何になる。最終的な目的が果たせなければ意味はない」
淡々とした声色に、ダンタリオンはにやりと口角を上げた。
「最終の目的ですか……クスクスクス。貴方の目的は、本当に"彼の帰還"なのでしょうか?」
「……何が言いたい」
「いいえ何も。私はいつも通り眺めて愉しむだけ。人が願い、邁進し、砕け散り絶望するその様を。そしてそれをいつでも思い出せるよう、仮面に刻んでおくのですよ」
悪魔の笑い声が部屋を満たす。
そんな二人の会話を遮るように、カチャリと部屋の扉が開かれた。
「クフフ、見ぃつけた。ディスったらここにいたのねぇ」
扉から顔を出したロシェは、お目当ての人物を見つけて口元を緩める。
「獄幻魔の排除に出ていたのではなかったのか、ロシェ」
「フフ、黒ニャンコ逃げちゃった。でもわざわざアタシが探すのは面倒でしょ? だからオモチャを取りにきたの」
長い袖に隠れた手が、銀の鳥籠を掲げてみせた。
鳥籠の中に詰め込まれたオモチャと呼ばれるものは、ガシャガシャと籠の中から出ようと声を荒げて暴れている。
『クソッ! ここから出しやがレ、クフフ女! オレ様をロミアの所へ返しやがレ!!』
オモチャの身体を鉄柵の隙間からぐにぐにと弄びながら、ロシェは楽しげな表情でディステルに視線を向ける。
「ねぇディス、このオモチャ使っていいでしょう?」
「……好きにしろ」
「クフフ、ありがとうディス。じゃぁアタシは黒ニャンコと遊んでくるわね」
騒がしい声に眉を寄せながら返答すると、彼女は嬉しそうに笑いながら籠を抱えて踵を返した。
「カワイイお姫様のナイトくん。でも今は捕われのプチ黒ニャンコ。フフ、黒ニャンコがくるまで、アタシと一緒に遊びましょう。クフ、フフフッ」
『アッ、コラやめロ引っ張るんじゃネェ綿が出ル! 鋏を近づけるんじゃネェ!!』
機嫌良くヒラヒラと手を振り、鳥籠と共にロシェが姿を消した後。
ディステルはソファから腰を上げ、部屋の中央にある大きな結晶の塊を見上げた。
透き通るような闇の結晶。その中で眠る“鍵”を見つめながら、ディステルはぽつりとつぶやく。
「……もう間もなくあの人に会える。そうすれば、また――」
言葉の最後、消え入るような声で発されたその名に、ダンタリオンはクスリと微笑を浮かべながらディステルを見つめた。
「さて、貴方の"願い"は無事成就するでしょうか。その果てに見せる絶望の表情はどんなものでしょう。その顔が見られた時、きっと貴方の仮面も完成する。ああ、とても愉しみです。フフ、フフフフ」
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