[07/12(木)更新]
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龍の章【鍵Ⅰ】 

聖域の外にいる魔龍の軍勢を倒し、ニースやスミレ達も聖域の中心部へやってきた頃。
リクウの力によって魔力を得たミルが意識を取り戻した。
「ありがとうリクウ。貴方がいなければ、私は力を暴走させてしまっていた」
「いいえ。それにしても貴方のその姿を拝見するのは、とても久しぶりですね」
「今は時空の制御と聖域の守護に力の殆どを使っているから」
少し恥ずかしげに苦笑した後、ミルはこの場に集まるすべての者に襲われた時の事を話す。
「一瞬で魔力の殆どを奪われた。意識を失う寸前に感じたのは、侵入者から僅かに発せられた狂幻魔の気配だけ」
「やはり相手はイルムの手の者だったのだろうか」
ミルの話から、リクウはある仮説を立てる。
「イルムは“完全なる魔導書”創造のために必要な「龍の書」を生み出す材料を集めている。ニースさん、奪われたのは全部でいくつですか」
「第五、第七、第八、第九の四つだ」
その返答にリクウは首を横に振る。それだけでは足りないのだ。
不足している材料を、イルムはどうまかなうつもりだったのか。
「時空に干渉できる貴方の魔力は、龍覚印以上の力といえます」
「……イルムは私の魔力を足りない龍覚印の代用にするつもりなのね」
この仮説が正しければ、「龍の書」に必要な要素はイルムの元に揃いつつある。
“完全なる魔導書”の完成まで、あとわずかしかない。
「奴等の思い通りにはさせない。イルムが魔導書を創る前に、龍覚印を奪還してみせる」
「このまま放置しておくわけにはいかないわ」
イルム達の企みを阻止するべく、ニースやリューネ達は天城へ向かおうと意気込みを見せる。
そんな中、ミルは不思議そうな面持ちでリクウへと向き直った。
「貴方が紅葉山から出てくるとは思わなかった」
「僕もできれば出たくはありませんでしたが……事情が変わりました。僕は貴方に聞きたいことがあって聖域に来たのです」
予期せぬ事態で後回しになってしまっていたが、リクウは元々ここへ来た理由を彼女に説明する。
「ディステルがあの人を継界へ戻そうとしています。しかし、彼が封じられた空間は完全に閉じられているはず。もし何らかの方法があるのなら教えて頂けませんか。貴方なら何かご存知だと……。あの時、龍王達と共にあの人を異空間へ封じたミル、貴方なら」
彼女は僅かに目を見開き、そしてゆっくりと首を横に振る。
「あの空間を開く方法は無い。……その鍵は、とうに失われているはずなのだから」

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