[05/09(水)更新]
最新話を追加


龍の章【ラシオスとガランダスⅡ】

突き立てた剣の衝撃で影が歪んだ瞬間、ラシオスはガランダスを外へ引きずり出す。
「チッ……力任せな所は変わってねぇな」
どろりとした影から姿を現したガランダスは、その手にリィを抱えながら彼女へ視線を向けた。
「その龍契士を明け渡せ、ガランダス」
「断る。アンタにお嬢は渡させねぇ」
「……っどうして貴様が龍契士を庇う!? 星海の地を襲撃し、龍覚印を奪った大罪人なのに」
「アンタに何を言っても理解なんざできねぇだろうよ。オレはお嬢の龍だ、最後までお嬢を守る。アンタに手は出させねぇ」
リィを巨体に隠しながら闘気を孕むガランダスの瞳は、ラシオスを敵として見据えていた。
その視線に歯を食いしばり、彼女は剣を握りしめる。
「……何故、私の元を去りその娘と契約した」
「アンタがオレを棄てたんだろ。アンタは言った、戦場に必要ない龍だってな!」
ラシオスは目を見開く。ガランダスの言葉が、かつての大きな戦での記憶を呼び起させた。
「あの時、アンタは深手を負ったオレを戦場から放り出した。龍喚士にとって龍は使えなくなったら切り捨てて当然か? そんなに偉いのかよ!」
「違う! 私はお前を捨てたりなどしていない!」
「じゃあアンタがしたのは何だってんだ!? オレは、まだ……」

アンタの背を守って戦いたかったのに。

ラシオスは手にしていた剣をゆっくり降ろし、地に視線を落とす。
「ガランダス……私は……」
かすかに震える彼女に、ガランダスが一瞬気を取られた時。

『……龍ハ、全ブ……滅ぼさ、なくチャ……』

重く悲しい声色と共に、虚ろな目をしたリィが目を覚ました。
スポンサードリンク

ピックアップ