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[03/28(水)更新]
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龍の章【昔の話】

契約龍レイゲンがディステルに与えたものは、他者の力を奪う希少な能力と、体が徐々に朽ちていく死の特性。そんな彼の為に、旅の仲間であった青年は龍の力を抑える龍牙を手渡した。
「私の為に……ありがとうございます」
常に相手を見下すような顔しかしないディステルが嬉しそうな表情を浮かべるのを見て、他の仲間達は驚きの声を上げた。
「ディスくんが笑ってる! 珍しいねー!」
「普段の冷徹仮面はどこへいったんでしょうね。貴重すぎて逆に気持ち悪いですよ」
いつもの凍てついた雰囲気など微塵も感じさせず、贈り物に夢中となっているディステルを見て呆れたように肩をすくめるリクウ。しかしそんな彼にも、青年は同じ龍牙を渡した。
「……僕にもですか?」
生命力が常に枯渇しているディステルとは正反対の特性を持っていたリクウは、リョウエンから流れ込む生命力でどんな傷もすぐに癒える。しかしその力は自身の体で耐えきれるものではない。過剰な力を抑える為に親友が用意した龍牙を受け取り、リクウはふわりと微笑む。そんな彼を、ディステルが忌々しげに睨み付けた。
「こんな貧弱ドラゴン馬鹿にもったいない事を……」
「誰が貧弱ですか!」
「貴様など、龍の力がなければただの体力無しではないか」
「た、体力なんて無くても頭が働けば良いんです!」
「ディスくんとリッくん、またケンカー? 本当に仲良しだねー!」
プラリネの呑気な声に、『冗談じゃない!』と二人の声が重なった。
ほら仲良しだよと笑うプラリネの肩にも、青年から贈られた美しい花が飾られている。
どうして突然、皆に贈り物をしたのか。リクウの問いかけに、青年は笑顔で告げた。
『大切な旅の仲間であるという、証のようなものを渡したかったのだ』……と。

「……」
仲間の証。そう言われた龍牙を握りしめる。
リクウとの再会で思い出した過去は、ディステルの心を僅かに波立たせた。
そんな彼の前に、ダンタリオンがケタケタと笑いながら姿を現す。
「貴方が感傷に浸るなど珍しい。昔の仲間との再会で、何か思う事でもありましたか?」
「……奴を仲間だと思った事など、一度もない」
「ああ、そうですか? フフフ、それはよかった。貴方の目的に、そんな陳腐な感情は必要ありませんからね」
神経を逆なでするような言葉に、ディステルは表情一つ変える事なく凍てついた瞳を向ける。そんな様子すら楽しんでいるかのように、ダンタリオンは声高に笑い声を響かせた。
「さぁ、貴方が欲する力のうち一つは手に入りました。次はどうされるのでしょう」
「……私の目的は、異空間に封じられたあの方を再び継界へと戻す事。その為に必要な駒を全て揃える」
「それでは、次の獲物の場所をお教えいたしましょう」

クスクスと笑みを浮かべながらダンタリオンが示した場所。
それは獄幻魔の居城だった。

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