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[03/14(水)更新]
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龍の章【暴食龍Ⅰ】

エンラがマジェを欲する理由には、コレクションとする以外にイデアルの記憶を喰わせる目的があった。
今エンラが封じている彼女の記憶は、失われた訳ではない。
何かのきっかけで封印が解かれ記憶を取り戻せば、イデアルはまた苦しむ事になるだろう。
「辛い記憶など失くしてしまった方が良いのじゃよ。そうでなければあの子はいつまで経っても過去に引き摺られたままとなってしまう」
哀しげに目を伏せる。
しかしキリは彼女の考えを真正面から否定した。
「貴方は何もわかっていないわ。例えマジェが記憶を喰らっても、既に起きてしまった過去まで無くす事はできないのよ」
契約龍を宿す左腕に力を込める。
自分とて、村と家族を失った辛い記憶を忘れてしまいたいと何度思っただろう。
けれどたとえ忘れられたとしても、あの幸せな頃にはもう……戻れない。
「辛い過去も苦しい記憶も全部、ずっと自分で抱えて、引き摺っていくしかないのよ!」
叫びと同時に自身の動きを封じる龍を引き剥がしたキリは、左腕を振り上げてエンラを岩壁に叩きつけた。 
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